Smith-Purcell放射

 1953 年にS.J.Smith E.M.Purcell は、直進する電子で光を作れることを実証した。グレーティング(金属のでこぼこ)近傍で電子は、斜めの波面を持つ電磁波を作る。斜めの波は、グレーティングから離れたところでは球面波に変わる。球面波の波長は、電子の進行方向では短く、反対方向では長い。このSmith-Purcell 放射の特徴は放射光の波長を簡単に変えられることである。電子の運動エネルギーを変えるだけで波長100 nmの短波長光から 10 mm の長波長光を出すことができる。Smith-Purcell 放射を利用した光発生器は、波長可変の小型光源として期待されている。

 

 

イオンポンプ

 空気中に置かれた平行極板の陽極と陰極の間で放電が起こると、陰極から電子が飛び出す。発生した電子は空気中の窒素分子と衝突し、窒素分子は窒化物イオンと電子に電離する。窒化物イオンは平行極板間の電場によって陰極に向かって加速され、陰極表面に衝突する。こうして空気中の窒素分子は窒化物イオンとして極板に吸着され、平行極板間の真空度が上昇する。この現象をイオンポンプは利用している。実際のイオンポンプには平行極板を挟むように磁石がついており、電子は磁場からローレンツ力を受けて螺旋運動をしながら陽極に向かって加速される。電子が螺旋運動をすることによって、気体分子と電子との衝突断面積が増加する。そして排気速度が上昇する。

 

 

コヒーレント光

 電場は位相が揃った状態で重ね合わされることで、強い光(コヒーレント光)が出る。この状況は、生じる光の波長より短い領域に電子が集まっている場合に実現する。たとえば電場E0[V/m]の光の波長より短い領域にN個の電子が集まっている場合である。図中の観測点における電場の合計はNE0[V/m]である。コヒーレントな光のパワーは(NE0)2[W]に比例する。電子の数が多いほど、つまり電子集団一つあたりの電気量が大きいほど強い光が出る。

 

 

光陰極電子銃

 金属に、金属の仕事関数より大きな光子エネルギーを持つ光が照射されると、金属中の自由電子がポテンシャル障壁を越えて真空中に出る。放出された電子を、電場で加速して金属表面から取り出し、利用できるようにする装置が光陰極電子銃である。光陰極電子銃は加速電場の種類によって2種類に分かれる。1つは加速電場が定常で時間変化しないDC光陰極電子銃である。もう1つは加速電場にマイクロ波を用いたRF光陰極電子銃である。

 

 関西大学量子放射光物理研究室のDC光陰極電子銃は、電子を出す際にチタンサファイアレーザーを使っている。陰極に1014個の光子が10兆分の1秒間当たることで、陰極から109個もの電子集団が10兆分の1秒間だけ発生する。発生した電子集団はとても高密度である。この高密度な電子集団が強い光を作り出す。今の技術では、チタンサファイアレーザーのみが、10兆分の1秒の間で高密度な電子集団を作ることができる。将来的には、チタンサファイアレーザーに代わる小型の電子集団発生装置が誕生することが期待される。

 

 

電界放出電子銃

 物質の表面に大きな電場が印加されると、真空-物質間のポテンシャル障壁が薄くなる。ポテンシャル障壁が薄くなると、電子の透過率が上がる。すると、電子が物質の内部から真空中に飛び出す。この電子を加速電場によって、金属表面から取り出して利用する装置が電界放出電子銃である。